第五話:現れた謎のギタリスト
- 2020.03.11
- 自作小説
翌朝、ぼんやりした意識の中目が覚めると、昨日の出来事がニュースになってテレビに報道されていた。
「前代未聞の事態です!人気ロックバンド、シエルのライブ後のインタビューに、一般人の男女2人が突然乱入し、「私達はお前達を超えるバンドになってみせる」と言い放ち、会場を後にしました!今日本の音楽業界は、混乱の相を呈しています!」
…ああああああああああ!!!!!
なんで俺は昨日あんな事をををををおおお!!!
今更だが、とんでもない不安感が襲ってきた。
この先俺はどうなるんだろう…
「ライカーーー居るーーー?」
そこへその不安の元凶である女、リアが玄関をノックしてきた。
「ああ、居るよ…入ったら…」
「おじゃましまーーす!」
勢いよく玄関をこじ開けてきた。
「なんでお前はそんなに元気でいられるんだよ…昨日あんな事があったくせに…」
こいつの神経がこの世で1番の謎だ。何故あんなに平然としていられるんだ。
「だってそんな状況、すぐに変わるんだもん。
さっまずはバンドメンバー集めよ!」
「ええ、この状況でそんなすぐに集まるわけ…」
「もうオファー来てるの!面接いこっ!」
「そんなバカな!」
この状況で俺たちとバンドが組みたい物好きが本当にいるのか!?
「で、どんなやつなんだそいつは」
「めちゃめちゃギターが上手くてかっこいい人!!」
「アバウトだな!」
まあ、せっかくだし会ってみるか。
「まあ、とりあえず会ってみるか」
「入って来てーリク!」
「お邪魔しまーす」
「て居るんかい!」
リアにリクと呼ばれた男は身長は俺より高い。180cmはあるかな。金髪で、どこか外国人のような顔立ちをしている。
「へえー君がライカか、思ったより小さいね」
「うるさいな!お前がデカ過ぎるんだよ!」
「はっはっは」
いきなり失礼なやつだな。俺はそんなに低くはないはずだぞ。日本人としてはだけど。
「ねえライカ、とりあえず歌ってよ」
「…ああ、いいぜ」
リアに促され、俺は自宅にあるマイクを掴む。
「じゃあ僕は、ギターやるね」
リクは、おもむろに背負っていたギターを取り出し、手馴れた手つきでチューニングをし始めた。「曲は何にするの?」
リクが尋ねる。そうだな、やっぱりあの曲かな…
「sun」
「ライカ…」
そう、sunはかつて俺たちが初めてデビューした時の曲なのだ。やっぱり最初はあの曲が良いな。
「じゃあ、行くよ」
俺は歌い出した。その瞬間、リアが何故か泣き始めた。
「やっと…始まるんだね…」
そのメロディーはまるで太陽のように眩しく、聴く人の心まで明るく照らすようだった。そう、このメロディーはヒデトが作ったんだよな…
「流石に上手いね、ピメヴァが構う訳だ」
「えっなんだって?」
「いや、なんでも」
リクが何か言った気がしたが、俺の歌は奴のお眼鏡にはかなったようだった。
「それじゃこれから宜しく、ライカ」
リクが手を差し出してきた。俺は手を出し、握手をした。
「ああ、確かに上手いんだな。リク、宜しく頼むよ」
「じゃあ決まりね!」
リアが嬉しそうに俺たちの握手に手を合わせてくる。
「これで後はベースとドラムが見つかれば、バンド組めるね!」
「ああ、早く見つけねーと…」
俺は静かにシエルを超える決意を更に固めた。
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