第四話:混乱

第四話:混乱

それからの展開は凄まじいものだった。まずファン達が一斉に暴れ回り、俺たちを殺さんとばかりに迫ってきた。それを警備員が必死に止めに入っている。

「何よあいつらは!!!ヒデト様に向かってなんて事を言うの!!!早くあいつらを追い出して!!!」

怒声が鳴り響く。会場は混乱状態だ。そして、その混乱を収めたのがヒデトだった。

「まさか2人が本当に現れるとはね。うん、楽しみに待ってるよ。でも、覚悟してね。きっとその道はとても厳しいものになるだろうからね。」

この状況になっても冷静に、そう言って、ヒデト達は楽屋へと入って行った。

「どういう事?なんなの、あの2人は?」

ファン達は困惑した様子で、俺たちを見ていた。

「やはり来ましたね、ユウスケさん、以前話していた元ツインボーカル

シエルのギタリスト、ケンジが楽屋でユウスケに話しかけた。

「ああ、予想通りだ。流石に良い度胸してるぜ、リアのやつは」

ユウスケが楽しそうに言う。

「でもこれで俺たちの評価が下がっちまうんじゃないか?良いのかよ本当に」

ベーシストのテツヤが反論する。

「別に構わないよ。むしろライバルが居た方が燃えてくるし、良い刺激になると思うんだ」

ヒデトがなだめる。

「それに、これでレコード会社に次の戦略を打ち出すきっかけも作れたしね…」

「ところでヒデト、あいつら無事に帰れんのか?」

「それは心配要らないよ。会場の外に事情を話してあるタクシーの運転手を待機させておいたからね」

後の事はよく覚えていない。警備員に連れられ俺たちは会場を追い出され、そのまま外へ。なぜか都合よくタクシーが止まっていて、そのまま何とか会場からは脱出できた。全く、予想はしていたがかなりの衝撃だった。リアはやっぱり頭のネジが吹っ飛んでるんじゃないのか。この状況で寝てるし。

「やれやれ…」

俺はひとまず胸を撫で下ろし、家に着くまで身体を休める事にした。

その後は何故かファンからの襲撃もなく、無事に家に着く事ができた。

「全く今日はえらい目にあったぜ…」

俺はそのまま自宅のベットに飛び込み、泥のように眠った。