第四話:混乱
- 2020.03.11
- 自作小説
それからの展開は凄まじいものだった。まずファン達が一斉に暴れ回り、俺たちを殺さんとばかりに迫ってきた。それを警備員が必死に止めに入っている。
「何よあいつらは!!!ヒデト様に向かってなんて事を言うの!!!早くあいつらを追い出して!!!」
怒声が鳴り響く。会場は混乱状態だ。そして、その混乱を収めたのがヒデトだった。
「まさか2人が本当に現れるとはね。うん、楽しみに待ってるよ。でも、覚悟してね。きっとその道はとても厳しいものになるだろうからね。」
この状況になっても冷静に、そう言って、ヒデト達は楽屋へと入って行った。
「どういう事?なんなの、あの2人は?」
ファン達は困惑した様子で、俺たちを見ていた。
「やはり来ましたね、ユウスケさん、以前話していた元ツインボーカル」
シエルのギタリスト、ケンジが楽屋でユウスケに話しかけた。
「ああ、予想通りだ。流石に良い度胸してるぜ、リアのやつは」
ユウスケが楽しそうに言う。
「でもこれで俺たちの評価が下がっちまうんじゃないか?良いのかよ本当に」
ベーシストのテツヤが反論する。
「別に構わないよ。むしろライバルが居た方が燃えてくるし、良い刺激になると思うんだ」
ヒデトがなだめる。
「それに、これでレコード会社に次の戦略を打ち出すきっかけも作れたしね…」
「ところでヒデト、あいつら無事に帰れんのか?」
「それは心配要らないよ。会場の外に事情を話してあるタクシーの運転手を待機させておいたからね」
後の事はよく覚えていない。警備員に連れられ俺たちは会場を追い出され、そのまま外へ。なぜか都合よくタクシーが止まっていて、そのまま何とか会場からは脱出できた。全く、予想はしていたがかなりの衝撃だった。リアはやっぱり頭のネジが吹っ飛んでるんじゃないのか。この状況で寝てるし。
「やれやれ…」
俺はひとまず胸を撫で下ろし、家に着くまで身体を休める事にした。
その後は何故かファンからの襲撃もなく、無事に家に着く事ができた。
「全く今日はえらい目にあったぜ…」
俺はそのまま自宅のベットに飛び込み、泥のように眠った。
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